建設業許可の中でも「大工工事業」の許可について、その概要と許可を取得するための要件について解説します。

※建設業許可申請の手引きや建設業許可事務ガイドラインによると以下の通りとなっております。

大工工事業とは

 大工工事を行う場合に必要となる建設業許可における業種の一つです。工事の内容としては、木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事です。例えば、大工工事、型枠工事、造作工事が該当します。

 以上により、請け負う工事が『大工工事』に該当し、請負代金の額が500万円以上(消費税込み)となる場合は、大工工事業の許可が必要となります。  

許可を取得するために必要な要件

  1. 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を備えていること
  2. 適切な社会保険に加入していること
  3. 専任の技術者がいること
  4. 請負契約に関して誠実性があること
  5. 請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用があること
  6. 欠格要件等に該当しないこと

以上6つの要件をすべて充たしている必要があります。

上記➊(経営業務の管理責任者)の要件について

 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を備えていること」とは、 許可を受けようとする者が、次の(1)~(3)のいずれかに該当しているという事です。

(1)常勤役員等に一定の経営業務の管理経験等があること
法人の場合は、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者)のうち常勤である者個人の場合においては、事業主又は支配人うち1人が、一定の経営業務の管理経験等を持っている必要があります。

【 一定の経営業務の管理経験等とは】
次の①~③のいずれかの経験を指します。
建設業に関し、5年以上経営者として総合的な管理をした経験
建設業に関し、5年以上経営者に次ぐ職制上の地位にある者として権限の委任を受けて、経営業務を管理した経験
※例えば、取締役会設置会社においては、取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任され、かつ、取締役会によって定められた業務執行方針に従って、代表取締役の指揮及び命令のもとに、具体的な業務執行に専念した経験を指します。
建設業に関し、6年以上経営者に次ぐ職制上の地位にある者として経営者を補助するため、建設工事の施工に必要とされる資金の調達、技術者及び技能者の配置、下請け業者との契約の締結等の経営業務全般について従事した経験

(2)常勤役員等に一定の経験があり、かつ、一定の要件を満たす補佐者を置くこと
法人の場合は、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者)のうち常勤である者個人の場合においては、事業主又は支配人うち1人が、次の①または②に該当する者であり、かつ、③④⑤の経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者として置いている必要があります。なお、補佐者については、③④⑤の経験を有する者であれば1人でも問題ありません。

建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関して、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者としての経験を有し、かつ、その5年のうち2年以上が建設業に関する役員等としての経験を有する者
建設業に限らず5年以上役員等の経験を有し、かつ、その5年のうち2年以上が建設業に関する役員等としての経験を有する者

【役員等とは】
 業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者又は相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有する者と認められる者を指します。

③許可を申請する会社において、建設工事の施工に必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請け業者への代金の支払いなどの財務管理を5年以上行った経験
④許可を申請する会社において、社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きなどの労務管理を5年以上行った経験
⑤許可を申請する会社において、会社の経営方針や運営方針を策定、実施する部署における業務運営の業務を5年以上行った経験

(3)国土交通大臣により(1)または(2)に掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定されること

上記❷(社会保険の加入)の要件について

 許可を受けようとする者は、適用除外になる場合を除いて、適切な社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)に加入していなければなりません。

【法人の場合】
① 健康保険・・・従業員数にかかわらず、75歳未満の者は加入しなければなりません。なお、役員しか存在しない法人も同様です。但し、国民健康保険組合に加入し、かつ、日本年金機構から健康保険適用除外承認を受けている場合は、加入しているものとして扱われます。
② 厚生年金保険・・・従業員数にかかわらず、70歳未満の者は加入しなければなりません。なお、役員しか存在しない法人も同様です。
③ 雇用保険・・・従業員で31日以上引き続き雇用が見込まれ、かつ、1週間の所定労働時間が20時間以上となる者がいる場合は、加入手続きを行わなければなりません。

【個人の場合】
① 健康保険・・・常勤の従業員数が5人以上いる場合に限り、75歳未満の者は加入しなければなりません。なお、国民健康保険組合に加入し、かつ、日本年金機構から健康保険適用除外承認を受けている場合は、加入しているものとして扱われます。但し、事業主本人は加入できません。
② 厚生年金保険・・・常勤の従業員数が5人以上いる場合に限り、70歳未満の者は加入しなければなりません。但し、事業主本人は加入できません。
③ 雇用保険・・・従業員で31日以上引き続き雇用が見込まれ、かつ、1週間の所定労働時間が20時間以上となる者がいる場合は、加入手続きを行わなければなりません。

上記❸(専任技術者)の要件について

【一般建設業の場合】

(1)~(6)のいずれかの要件に該当する必要があります。

(1)下記のいずれかの学歴と実務経験を有する者

①学歴として認められる学科
建築学に関する学科
・都市工学に関する学科

②必要とされる実務経験
・上記①の指定学科を修めて高等学校(旧中等学校令による実業学校を含む。)若しくは中等教育学校卒業後5年以上の実務経験
・上記①の指定学科を修めて大学若しくは高等専門学校(旧専門学校令による専門学校を含む。)卒業(専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後3年以上の実務経験
・上記①の指定学科を修めて専修学校専門課程卒業後5年以上の実務経験
・上記①の指定学科を修めて専修学校専門課程卒業後3年以上の実務経験を有する者で専門士又は高度専門士を称する者

(2)実務経験を有する者


大工工事に関し10年以上実務の経験を有する者

(3)下記のいずれかの資格を有する者

① 一級建築施工管理技士
② 二級建築施工管理技士(種別:躯体)
③ 二級建築施工管理技士(種別:仕上げ)
④ 一級建築士
⑤ 二級建築士
⑥ 木造建築士
⑦ 技能検定(建築大工)※等級区分が2級の場合は合格後実務経験3年(但し、平成15年度以前の合格者は1年)
⑧ 技能検定(型枠施工)※等級区分が2級の場合は合格後実務経験3年(但し、平成15年度以前の合格者は1年)

(4)下記のいずれかの検定試験に合格し実務経験を有する者

①旧実業学校卒業程度検定規定による検定で、上記(1)①に掲げる学科に合格した後5年以上実務の経験を有する
②旧専門学校卒業程度検定規定による検定で、上記(1)①に掲げる学科に合格した後3年以上実務の経験を有する

(5) 下記のいずれかの登録基幹技能者講習を修了した者

① 登録型枠基幹技能者
② 登録建築大工基幹技能者

(6)国土交通大臣が認定した者

【特定建設業の場合】

※(1)~(3)のいずれかの要件に該当する必要があります。

(1)下記のいずれかの資格を有する者

① 一級建築施工管理技士
② 一級建築士

(2)下記のすべての要件を充たす者

要件① 上記【一般建設業の場合】(1)~(5)のいずれかの要件に該当する。(※一級建築施工管理技士または一級建築士である場合は除く)
要件② 大工工事を発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4500万円以上であるものに関し、2年以上の指導監督的な実務の経験を有する。(※下請負人としての経験は含まれません)
    
「指導監督的な実務の経験」とは、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任者又は工事現場監督者のような資格で工事の技術面を総合的に指導監督した経験です。

(3)国土交通大臣が認定した者

上記❹(誠実性)の要件について

 請負契約に関して誠実性があること」 とは、許可を受けようとする法人の役員等(取締役、相談役、顧問等)、支店又は営業所の代表者、個人である場合の本人又は支配人等が、請負契約の締結又は履行に際して詐欺・脅迫・横領等法律に違反する行為又は工事内容・工期等について請負契約に違反する行為をするおそれがない者であるという事です。なお、建築士法、宅地建物取引業法の規定により不正又は不誠実な行為を行ったことをもって免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない者は、誠実性の要件を満たさないものとして取り扱われます。

上記❺(財産的基礎)の要件について

 請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用があること」とは、倒産することが明白である場合を除き、申請時において下記の要件を備えているという事です。

【一般建設業の場合】
次の①~③のいずれかに該当している必要があります。
自己資本の額が500万円以上であること
②500万円以上の資金を調達する能力を有すること
③許可申請の直前過去5年間許可を受けて継続して建設業を営業した実績を有すること

【特定建設業の場合】
次の①~③のすべてに該当している必要があります。
欠損の額が資本金の額の20パーセントを超えていないこと
流動比率が75パーセント以上であること
③資本金の額が2000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4000万円以上であること

〔自己資本とは〕
法人の場合 ⇒ 貸借対照表における「純資産の部」の「純資産合計」の額です。
個人の場合 ⇒ 貸借対照表における期首資本、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額です。
〔欠損の額とは〕
法人の場合 ⇒ 貸借対照表の繰越利益剰余金が負の場合にその額が資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の合計を上回る額です。
個人の場合 ⇒ 事業主損失が事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額を上回る額です。
〔流動比率とは〕
流動資産合計を流動負債合計で割り100を掛けた数字です。

上記❻(欠格)の要件について

 欠格要件等」は以下のとおりです。これらのいずれかに該当する場合は、許可を受けられません。

  1. 許可申請書又はその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、又は重要な事実の記載が欠けているとき
  2. 法人にあっては、当該法人、その法人の役員等、法定代理人、支店又は営業所の代表者が、また、個人にあってはその本人又は支配人等が、次の①~⑧に該当しているとき

① 精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者又は破産手続開始決定を受け復権を得ない者
② 不正の手段により許可を受けたこと等により、その許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者。
③ 許可の取消しを免れるために廃業の届出をしてから5年を経過しない者
④ 建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、あるいは危害を及ぼすおそれが大であるとき、又は請負契約に関し不誠実な行為をしたこと等により営業の停止を命ぜられ、その停止期間が経過しない者
⑤ 禁錮以上の刑に処せられ(執行猶予も含む)、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑥ 次の法律に違反し、又は罪を犯したことにより罰金刑に処せられ (執行猶予も含む) 、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
〔⑥に該当する法律〕
・建設業法
・建築基準法、宅地造成等規制法、都市計画法、景観法、労働基準法、職業安定法、労働者派遣法の規定で政令で定めるもの
・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
・刑法第204条(傷害)、第206条(現場助勢)、第208条(暴行)、第208条の2(凶器準備集合及び結集)、第222条(脅迫)又は第247条(背任)の罪
・暴力行為等処罰に関する法律
⑦ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員、又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
⑧ 暴力団員等が、その事業活動を支配する者

営業所の要件

 建設業法における営業所は、常時建設工事の請負契約の見積り、入札、契約締結を行う事務所であり、下記①~⑦の要件を備えていなければなりません。なお、建設業に無関係な支店、営業所及び単に登記上の本店や特定の目的のために臨時に置かれる工事事務所、作業所などは建設業法における営業所に該当しません。

① 外部から来客を迎え入れ、建設工事の請負契約締結等の実体的な業務を行っていること
② 電話、机、各種事務台帳等を備えていること
③ 契約の締結等ができるスペースを有し、かつ、居住部分、他法人又は他の個人事業主とは容易に移動又は撤去できない間仕切り等で明確に区分されているなど独立性が保たれていること
④ 事務所としての使用権原を有していること
⑤ 看板、標識等で外部から建設業の営業所であることが分かるように表示してあること
⑥ 常勤役員等(当該常勤役員等を直接に補佐する者を含む)又は施行令第3条に規定する使用人(建設工事の請負契約締結等の権限を付与された者)が常勤していること
⑦ 専任技術者が常勤していること

まとめ

 以上が、大工工事業の許可を取得するための要件となります。実際に申請する際には、上記の要件を充たしたうえで申請書を作成し、要件を充たしている事について証明書類を作成する必要があります。

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